こうの史代を読む

yunaginomachi

コアなマンガ読みの友人から今注目のこうの史代さんの作品(『夕凪の街』、『ぴっぴら帳』、『こっこさん』)を借りて読む。
どんな人なんだろうと思っていたけど、その他のギャグものを読んでやっと作家の全体像・作家の個性が見えた気がする。去年アクションという雑誌の中でこの『夕凪の街』が掲載されたことを思うとさぞ目立ったことだろうと思う。この話は、原爆投下後の広島の街を舞台に、主人公の生きる日常をつきまとうように原爆という暗い影が落ちているところが描かれていて、作者特有のほのぼのしたタッチとテーマの重さのギャップが強調されている。
夕凪とは海風から陸風に替わるときの無風状態のことを言う。つまり、原爆の被害がまだそこここに見られる街から、復興へと向かう喧騒の間にふと生まれた静けさの中で、わたしたちはこの事件を背負って生きていかざるをえないんだ、ということを痛切に伝えようとした作品と言えるかもしれない。うむ。
感想としては、ギャグはちょっと…という感じ(笑)。けどそれでも固有の絵や間のとり方は他にないものだし、この前アクションに掲載された『桜の国』もよかったので、今年10月に発売予定の単行本には期待。