福田恆存『私の幸福論』(ちくま文庫)読了

yamnak2004-12-10

再読。シェイクスピアの翻訳などで知られる福田恆存が昭和30年から1年間講談社の「若い女性」という雑誌で連載していた『幸福への手帖』を文庫化したもの。
以前古本屋でバイトしていたときに、レジをやっていると、なんていうか、生き方探し的な自己啓発本が、20代後半から30代の女性にやたらと売れていくのを見て、そんなもんかなあと考えていたことがあったけれど、この一見そっち系なのかと思わせる題名のこの本は、初めっからいきなり女性の容貌について「醜く生まれついた女性に生涯つきまとう不幸という現実を無視するわけにはいかないのです。いくら残酷でも、それは動かしがたい現実なのであります」と力説する第一章「美醜について」を読めば、これが他の「幸福論」とは別物だということがはっきりわかる。とにかく人が安易に流されがちな弱さや愚かさをビシバシ論理的に指摘していて、解説の中野翠さんの言をまんま借りれば「特別に難しい言葉は使っていないが、決して軽く読み流せるものではない。いや、逆に、傍に赤線でマークしてでも頭の中にしっかりと叩き込んでおきたくなるようなくだりがぎっしりと詰まっている」。著者あとがきで引用されている親戚の女性の「初めて目がさめた、なんとなく行き止りのように思えていた道が急に広く開けたような気がする」という言葉も、やや大袈裟だが納得がいく。中でも「宿命について」「自由について」を面白く読みました。
ちなみに、この本は山田太一さんがあまり人に教えたくない本として紹介されていたのを見て知りました。

私の幸福論 (ちくま文庫)

私の幸福論 (ちくま文庫)



id:bakuhatugoroさんのところにいくつか引用がありましたので興味があれば、、、
http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20041004